何かを複数製造するためには、大抵「型」を用います。
例えば、クッキーの抜き型もそうです。効率よく、同じ形のクッキーを作ることができます。
靴にも「型」があり、「木型(きがた)」と呼ばれています。
その型に革などを被せて、靴を作っていきます。
昔は木で型を作っていたため「木型」と呼ばれていますが、現在の木型の多くはプラスチック製です。
初めて木型屋さんに行ったときのことを、私は今でも鮮明に覚えています。
シュープレモを立ち上げる前で、毎日パンプスを履いているものの、痛くて絆創膏が手放せない日々のことでした。
探しても足に合う靴が全然ない
>オーダーメイドは高いし、コンフォート寄りのデザイン
>それなら理想の靴を自分で作っちゃう?!
という流れで、手始めに木型を探しに行ったのでした。
見せていただいたのは、木型の山、山、山!!
靴はデザイン毎に異なる木型が必要なため、広い倉庫に無数の木型が山積みになっていました。
この中になら私の足に合う木型があるかも!!と、期待に胸が膨らみました。
ところが、その期待はすぐに脆くも崩れ去ります・・・そう、そこには「幅狭ワイズ」の木型は一つもありませんでした。無数の木型が山積みになっているのに、幅狭ワイズは全くなかったのです。
そこで私はようやく悟りました。
探しても探しても足に合う靴がないのは、やはり幅狭靴が全く作られていないからなのだと。
また、市販の靴にはほぼワイズ展開がないことも目の当たりにします。
幅広の2E/3E/4E展開の木型は、少ないけれどありました。
ですが、私の足は細幅かつ左右でサイズ・ワイズが違うのです。両方の足にぴったりの靴を作るためには、ワイズ展開が必須でした。
そんな非常に個人的な理由で、木型屋さんにとっても初となる幅狭の木型を作ってもらい、シュープレモは創業当初から幅狭・ワイズ展開の木型と共にスタートしました。(もちろん、左右サイズ違いもできるようにしました)
ところが、世の中には、ワイズ毎に木型を使い分けずに靴を作っているところがあると後から聞いて、びっくりしました。聞くと、例えばD幅(例:足囲200mm)の木型で作った靴に、分厚い敷きパッドを入れることでC幅(同194mm)やB幅(同188mm)の靴として販売しているそうです。
確かに計算上の足囲はB-C幅と同等になりますが、靴の幅はD幅の広さのままパッドで厚みが潰されるだけなので、B-C幅の木型を使っている靴とは全然違う靴になってしまいます。
(靴の幅が広いまま厚みを潰して前滑りを止めようとすることは、足の形・アーチ構造を潰すことになり、足にとって非常に負担が大きくなります。また、足囲が細い人は、基本的に土踏まずやカカトの幅も細いはずなのに、土踏まず/カカト幅がD幅のままであれば、当然サイド部分に隙間が空いてしまいます)
なぜワイズ別に木型の使い分けをしないかというと、コストの問題だと思われます。
木型はデザイン毎に必要なので、ワイズ展開をすればするほど、数が膨大になりコストが増えてしまうのです。
ですが、シュープレモは高いフィット感の実現には、「ワイズ別の木型の使い分けはマスト」だと考えています。
コストがかかるとしても、そこは譲れない、シュープレモのこだわりです!
「同じサイズ・ワイズ表記の靴なのに、履き心地が全然違う!」とお客様によく言っていただくのですが、木型をワイズ別に使い分けていなかったり、幅と厚みの設計が違ったり、部材や靴の作り方が違ったり・・・様々な理由で違いが生まれています。
※過去記事はブログに掲載しています
シュープレモのこだわり(1):熟練職人の「手づり」
シュープレモのこだわり(2):縁の下の力持ち「部材」は独自開発!